master horjaの歩み
master horjaは1989年、群馬県高崎市にて創業いたしました。創業者である時計技師の山田健一は、スイスのジュネーブ時計学校で7年間の修業を積み、ヨーロッパの著名な時計工房で研鑽を重ねた後、日本に帰国しました。彼の信念は明確でした。それは、スイスの伝統的な時計製造技術と日本の細やかな職人精神を融合させ、世界最高水準の時計修復サービスを日本で提供することでした。
創業当初、工房は小さな作業スペースから始まりました。しかし、複雑機構の修復や希少なヴィンテージ時計の蘇生において、他では実現できない水準の技術を提供することで、徐々に評判を確立していきました。特に、廃盤となった部品の精密な再製作や、損傷した文字盤の修復技術において、国内外のコレクターから高い評価を得るようになりました。
2005年には、現在の高崎モントレーに工房を移転し、最新の精密機器と伝統的な手工具を備えた専門施設を構えました。この工房には、顕微鏡検査室、超音波洗浄設備、部品製作用の旋盤とCNC機器、そして温湿度管理された保管室が整備されています。これらの設備により、あらゆる種類の時計修復に対応できる体制が整いました。
現在、master horjaは3名のマスター時計技師と2名の専門技術者からなるチームで運営されています。各技師は少なくとも15年以上の実務経験を持ち、それぞれが複雑機構、文字盤修復、部品製作などの専門分野を持っています。私たちは年間約200本の時計を丁寧に修復しており、その中には19世紀の懐中時計から最新の複雑機構まで、幅広い時代とスタイルの時計が含まれています。
私たちの使命は単純です。それは、お客様の大切な時計に新しい生命を吹き込み、次の世代へと受け継がれる状態に修復することです。時計は単なる時間を知る道具ではありません。それは技術の結晶であり、芸術作品であり、何より家族の歴史や記憶を刻む大切な存在です。私たちはその重みを理解し、一つ一つの時計に最大限の敬意と技術を持って向き合っています。
品質基準と修復プロセス
精密検査システム
全ての時計は到着後、15倍から60倍の顕微鏡下で詳細な検査を実施します。ムーブメントの各部品、文字盤の状態、ケースの損傷度を記録し、包括的な診断レポートを作成します。この初期検査により、必要な修復作業を正確に特定し、適切な修復計画を立案します。
専門工具と設備
当工房では、スイス製の精密工具を使用しています。Bergeon社やHomis社の専門工具、超音波洗浄機、タイミングマシン、そして部品製作用の旋盤とCNC機器を完備しています。これらの設備により、0.01mm単位の精度での作業が実現できます。
多段階品質検査
修復作業は複数の工程を経て実施され、各工程で品質検査を行います。組み立て後は、最低72時間の動作テストを実施し、日差、振り角、振動数を測定します。複雑機構の場合は、さらに長期間のテスト期間を設けます。全ての検査データは記録され、お客様にご報告します。
詳細な作業記録
全ての修復作業は写真撮影と詳細な記録を行います。分解時の状態、交換した部品、調整内容など、全ての工程を文書化します。これらの記録は、将来の参照用として保管され、時計の履歴書として機能します。お客様には作業完了時に包括的なレポートを提供します。
修復プロセスの流れ
初期診断と見積もり
時計をお預かりし、詳細な検査を実施します。状態を評価し、必要な作業内容と費用の見積もりを提示します。
完全分解とクリーニング
承認後、ムーブメントを完全に分解します。全ての部品を超音波洗浄機で洗浄し、顕微鏡下で損傷を確認します。
部品交換と修復
損傷または摩耗した部品を交換または修復します。必要に応じて部品を製作し、文字盤の修復作業を実施します。
組み立てと潤滑
適切な潤滑油を使用して、ムーブメントを慎重に組み立てます。各部品の位置を精密に調整します。
調整と精度テスト
タイミングマシンで精度を測定し、複数の姿勢で調整します。日差を許容範囲内に収めます。
最終検査と返却
最低72時間の動作テスト後、全ての機能を確認します。詳細なレポートとともに、お客様にお返しします。
私たちの価値観と専門知識
時計修復は単なる技術作業ではありません。それは歴史の保存であり、芸術作品の修復であり、そして何よりも信頼関係の構築です。お客様が当工房に時計を託される時、それは単に故障した機械を預けているのではなく、家族の思い出や個人的な歴史を委ねていることを、私たちは深く理解しています。
当工房の専門知識は、複数の領域にわたります。機械式ムーブメントの構造と動作原理に関する深い理解、各時代の製造技術に関する歴史的知識、そして現代の精密加工技術の活用能力です。この三つの要素が組み合わさることで、19世紀の懐中時計から最新の複雑機構まで、あらゆる時計の修復が実現できます。
特に重要視しているのは、オリジナル性の保存です。コレクター時計の場合、不適切な修復は価値を大きく損なう可能性があります。私たちは、その時計の製造年代、製造方法、使用材料を十分に研究し、可能な限りオリジナルの状態を尊重した修復を行います。部品交換が必要な場合も、当時の仕様に準拠した部品を使用するか、正確に再製作します。
また、お客様とのコミュニケーションを重視しています。専門的な作業内容を分かりやすく説明し、修復方針について十分に相談します。作業中に新たな問題が発見された場合、必ず事前にご連絡し、承認を得てから作業を進めます。この透明性が、長期的な信頼関係の基礎となっています。
当工房の技術者は、継続的な学習と技術向上に励んでいます。時計製造技術は常に進化しており、新しい材料や修復方法が開発されています。私たちは国内外の専門セミナーに参加し、他の時計技師との情報交換を行い、最新の知識と技術を取り入れています。同時に、伝統的な手作業の技術も大切に継承しています。
master horjaは、単に時計を修理する場所ではありません。それは時計という芸術作品に対する敬意、職人技術への献身、そしてお客様の信頼に応える責任感が融合した場所です。私たちは今後も、この価値観を守りながら、日本における時計修復の最高水準を追求し続けます。お客様の大切な時計を、確かな技術と真摯な姿勢でお預かりいたします。